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『秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』(J.ウォーリー・ヒギンズ)

『秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』(J.ウォーリー・ヒギンズ)_d0172422_11575416.jpg今月発刊された光文社新書の1冊で、カラー版で454頁という普通の新書の2倍ほどの大冊である。

筆者のヒギンズ氏は、知る人ぞ知る鉄道ファンであり、これまでにカラーの豪華鉄道写真集を数点出しており、氏のコダクロームによる鉄道写真それも昭和30年代の私鉄や路面電車を撮ったものに惹かれるのは筆者だけではないだろう。

本文に記されているが、氏は1927年にアメリカのニュージャージー州の生まれというから今年で御年91歳である。父親は鉄道関係者で、母親にベビーカーに乗せられ、線路際でSLを眺めたという生粋の鉄道ファンである。1956(昭和31)年、米軍の軍属として来日、日本の鉄道に魅了され、全国各地に足を延ばし、鉄道写真だけでなく、たくさんの日本の風景をも撮り貯めていたのだ。

本書はこの成果をまとめたもの(集大成といってもよかろう)であり、大きく東京編と地方編の二つとテーマ別写真集から成っている。

東京編は鉄道沿線を軸にして、お得意の鉄道写真(これも車輌中心でなく、周りの風景を取り込んでいるのがいい)だけでなく、東京オリンピックを前にした街の風景が切り取られている。地方編は北海道から九州屋久島までの鉄道(その多くは廃止されたしまった)と多分、今はもう見られないであろう風景が、これでもかと出てくる。氏は「何の役に立つかわからにようなものでも、時間の経過と共に歴史の一部となる」(p452)といわれるが、まさにそのとおりのことが、本書に残されたといえよう。東京はもちろん地方もこの後、高度成長期へと突き進んでいき、昭和30年代は歴史の彼方へ消えて行った。

昭和30年代にちょうど10代が重なる者にとって、本書に掲載された電車や風景は、モノがなくても心が豊かであったころを思い出させてくれる。

最後のテーマ別写真集は、運ぶ・モノレール・危ない!・SL・働く人たち・面白い看板・危険な鉄橋・季節の行事の八つのテーマ毎に、氏が興味を持った写真と外国人の視点から書かれた文章が並んでおり、これも面白い。


by kiraku-an | 2018-10-26 11:59 | 読書